まいぷれ五・七・五
2023年3月の「無人駅句会」は10名が参加しました。今回は東氏が選句した10句の俳句をご紹介いたします。

(撮影:和夫)
新鮮な白菜は、朝のスーパーに山積みされたのに出くわすとスッキリとした青い匂いがする。そんな白菜はざく切りが一番、包丁を入れたときのザクツザクツという音は、包丁の俎板(まないた)に当たる音とともに爽快感がある。優れない気分も一気に晴れるというものだ。季語「白菜」(冬)。
公園などを歩いていると、犬の散歩をしている人に次々と出会う。冬場は犬も主も憂鬱そうだが、春が来ると堤は草花などで犇(ひし)めき合って、犬も主も晴れの気分である。殊に犬は楽しそう。主のリードは引っ張られ続けだ。季語「春」(春)。
鶏(にわとり)だろうが、季節によって卵を産み落とす時間に多少の差があるような気もする。春だからゆったりとするりと産み落とすような。『寒卵』は滋養が多いという事で冬の季語であるが、『春卵』は季語ではない。ゆで卵、卵焼き、などなど、春の方が美味しそうだ。季語「春」(春)。
末黒野(すぐろの)は、早春に野焼きをしたあとの野をいう。山や土手など、焼かれた跡の黒々とした様は、その臭いとも相俟(あいま)っておどろおどろしさがある。特に多感な少年期には胸にずしりと来るものがあるだろう。季語「末黒野」(春)。
『弥生』という言葉の響きには早春のゆったりとした時間の流れを思う。いつもの歩き馴れた径ではなく、ちょっと気になる径を歩いてみたい、という欲求は、三月の月の成せる技かもしれない。季語「弥生」(春)。
鱚(きす)は一般に白鱚を食すようである。僕は鱚は天ぷらが好きだ。見た事はないが、干物にもするのだろう。透明感のある白さだから、さらりと並べられたら、きれいごとであるかのように感じたのだ。何処かアイロニーがある。季語「鱚」(夏)。
リボンを付けてもらったのだから雌猫だろう。優秀な雄猫の気を引くためのオシャレなアイテム。色はピンクか赤か、黄色もいいな。いざ、恋猫の社交場へと向かう。壮絶なバトルの始まり始まり。季語「恋の猫」(春)。
ほっとするような柔らかさを感じさせる春の夕焼、帰り道もいつもより穏やかな気分である。こんな日は自分へのご褒美に花がいいな、花屋さんに立ち寄ったのだ。いろんな春の花々に癒されている。季語「春夕焼」(春)。
これから新学期が始まる。真新しい教科書だ、ページを繰るとぷーんと新書にインクの匂いが鼻を掠(かす)める。季節は春、山の木々の新芽や花々に春の息吹を感じ取っているのだ。長い冬から覚めて春の山は笑っているかのようである。季語「山笑う」(春)。
若い漁師には小さい女の子がいるのだ。一日の漁が終って船から上がる。海には今にも夕陽が落ちそうだ。ゆっくりとした春の夕暮れである。今日は三月三日、上巳(じょうし)の節句だ。若い漁師は家路を急いだ。家には段飾りのお雛様があり、娘の健やかな成長を願うのである。季語「三月三日」(春)。
(東英幸 記)
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