のとのもん×中央線ハーヴェスト2026

2026年6月12日(金) ~ 6月21日(日)
JR中央線沿線の5つの駅(中野、高円寺、阿佐ヶ谷、荻窪、西荻窪)周辺の参加店舗
参加予定店舗は全88店舗(中野: 7店舗、高円寺: 40店舗、阿佐ヶ谷: 23店舗、荻窪: 7店舗、西荻窪: 11店舗)
イベント内容
居酒屋、バル、イタリアン、和食、カフェ、バーなど、多種多様なジャンルの店舗が参加
杉並区で活躍している人を取り上げます
★高円寺ハーヴェスト 座・高円寺2階 まぁるいカフェ店長 加茂 剛さん★

古着屋、ライブハウス、個性的な飲食店、そしてどこか懐かしい商店街で有名な杉並区高円寺。
この街には、昔から「いろんな人がいて当たり前」という空気があります。
そんな高円寺の真ん中、座・高円寺2階にある《まぁるいカフェ》。
その店長を務めるのが、加茂 剛さんです。
一見すると、穏やかで控えめな料理人。
しかし、その内側には、街・人・食をつなぐ確かな思想と実践があります。

加茂さんは、高円寺生まれ・高円寺育ち。
今も実家の近くに住み、日常のすべてがこの街とともにあります。
「高円寺って、変わった人も普通にいる街なんですよね」
そう語る言葉の通り、この街の価値は“整っていること”ではなく、
多様な人がそのまま存在できることにあります。
加茂さん自身、その空気の中で自然に育ちました。
だからこそ今、「多様性」という言葉を掲げるのではなく、
それを“当たり前の空気として再現する場”をつくろうとしています。

意外にも、加茂さんが料理人を志したのは20代半ば。
夜間の専門学校に通いながら、昼は働くという生活からスタートしました。
動機はシンプルです。
「自分の腕で食べていきたい」
一度身につければ一生使える技術。
それが料理でした。
イタリアンを選んだ理由もまた、実に現実的です。
厳しい上下関係のイメージがあった和食やフレンチに対し、自分に合う世界を選んだ結果でした。
ここにも、加茂さんらしい地に足のついた判断が見えます。


料理人として経験を積む中で、加茂さんの意識は徐々に変わっていきます。
転機のひとつが、山形・鶴岡の名店《アル・ケッチァーノ》での経験。
地産地消を徹底した料理に触れたことで、「食材の背景」への意識が芽生えました。
さらに決定的だったのが、ある日の出来事。
常連客が持ってきた、福島のアスパラ。
「食べた瞬間、全然違うと思った」
みずみずしさ、香り、生命力。
それは、これまで扱ってきた食材とは明らかに別物でした。
この体験が、加茂さんの活動の原点になります。


地方の美味しい食材を紹介したい――しかし、そこにはいくつかの課題がありました。地方の食材は送料が高く、小さな店舗では扱える量にも限りがあり、その結果として価格が上がってしまうという問題です。
そこで加茂さんは、シンプルな発想にたどり着きます。
「じゃあ、みんなで仕入れればいい」
周囲の飲食店に声をかけ、まとめて仕入れて分配する仕組みを作りました。これが、のちの「高円寺ハーヴェスト」の始まりです。
当初は単なる共同仕入れに過ぎず、イベントという形ですらありませんでした。
しかし、この取り組みは次第に変化していきます。同じ食材を扱う店舗同士で「この店も使っているのか」という気づきが生まれ、人の回遊が生まれ、集客が増え、さらには農家にとっても安定した供給先が生まれるというメリットが生まれていきました。
こうして、単なる仕入れの工夫は、やがて街全体で食材を共有する仕組みへと進化していきます。
やがてこの取り組みは、高円寺だけにとどまらなくなります。中野、阿佐ヶ谷、荻窪、西荻窪といった中央線沿線へと広がり、現在では60店舗以上が参加する規模へと発展しました。
ただし、加茂さん自身はこう語ります。
「大きくしようと思ってやったわけじゃない」
人から人へと紹介され、つながり、また広がっていく――すべては自然発生的に生まれたものです。このスタイルこそが、ハーヴェストの最大の特徴と言えるでしょう。


加茂さんは自らを、こう定義しています。
「食と農、そして人をつなげる仕事」
料理を作るだけではなく、生産者と飲食店を結び、飲食店同士のつながりを生み出し、さらには街と地方をつなぐ役割を担っています。
さらに現在では、規格外食材の活用や商品化、新たな収益モデルの構築といった可能性も広がりつつあります。
それは単なる料理人の枠を超えた、つながりを生み出す存在としての新しい在り方と言えるでしょう。

そして現在の拠点が、座・高円寺2階「まぁるいカフェ」です。
ここで加茂さんが目指しているのは、単なる飲食店ではありません。
「いろんな人が同じ空間にいる状態をつくりたい」
その想いのもと、子どもから高齢者までをはじめ、ろう者の方(手話でのコミュニケーション)、車椅子を利用される方、外国人の方(英語対応)、さらにはビーガンの方など、さまざまな背景を持つ人たちが、無理なく自然に過ごせる空間づくりを目指しています。
すべての人が「そのまま」でいられる場所。
それはまさに、高円寺という街が持つ空気そのものを体現していると言えるでしょう。

まぁるいカフェ Staffのかたと
看板メニューは杉並野菜を使ったパスタです。
しかし、メニューは固定ではありません。その理由は明確で、都市農業は規模が小さく、収穫量が日々変動するためです。こうした背景から、加茂さんはその日に入った食材を見て前日にメニューを考え、日替わりで提供するスタイルをとっています。
さらに加茂さんは、単に食材を使うだけではなく、「どう調理すればその魅力が伝わるか」を常に意識しています。例えば、煮物のイメージが強い冬瓜をあえて生の状態で提供するなど、固定観念にとらわれない工夫を凝らしています。
それは単なる料理ではなく、食べた人の記憶に残る体験としての一皿なのです。

ビーガンメニューや豆乳プリン、英語対応、手話などの取り組みは、一見すると「多様性対応」の施策とも言えます。
しかし加茂さんの場合、それらは制度として整えたものではなく、日々の営みの中で自然に生まれてきた延長にあります。
「必要だからやる」そして「やりながら学ぶ」。
その姿勢こそが、押し付けではない、やわらかく自然な多様性を生み出しているのです。

2026年6月12日(金) ~ 6月21日(日)
JR中央線沿線の5つの駅(中野、高円寺、阿佐ヶ谷、荻窪、西荻窪)周辺の参加店舗
参加予定店舗は全88店舗(中野: 7店舗、高円寺: 40店舗、阿佐ヶ谷: 23店舗、荻窪: 7店舗、西荻窪: 11店舗)
イベント内容
居酒屋、バル、イタリアン、和食、カフェ、バーなど、多種多様なジャンルの店舗が参加
加茂剛さんは、前に出て語るタイプでも、大きなビジョンを掲げるタイプでも、計画的に拡大を志向する人物でもありません。それでも不思議と人が集まり、仕組みが生まれ、街が動いていく。その中心に静かに存在しているのが、加茂さんです。
まさに「場の力」を体現する人物と言えるでしょう。料理人であり、人と人をつなぐ存在であり、街を編集する存在。そして何より、高円寺という街のあり方そのものを、自然なかたちで体現している人物です。
今回、加茂剛さんのお話を伺って強く感じたのは、「特別なことをしている」というよりも、日々の積み重ねの中で自然と人と人がつながり、その結果として大きな流れが生まれているということでした。
高円寺という街の空気感――多様な人がいて、それを当たり前として受け入れている文化。
それを無理に言葉で説明するのではなく、カフェという場として形にしているのが加茂さんなのだと思います。
料理においても同様で、杉並野菜をただ使うのではなく、「どうすれば伝わるか」を考え抜いた一皿一皿には、地域や生産者へのまなざしが感じられました。
派手さはないけれど、確実に人が集まり、関係が生まれ、広がっていく。
その中心に、静かに立ち続けている加茂さんの存在こそが、この街の魅力そのものなのかもしれません。
これから「まぁるいカフェ」がどのように変化し、どんな人たちが交わっていくのか。
その先の風景が、今からとても楽しみです。

※営業時間・営業日は変更となる場合があります。訪問前に公式情報をご確認ください。
長年親しまれてきた「カフェ アンリ・ファーブル」を引き継ぎ、2026年4月にリニューアルオープン。
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。

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